公正証書遺言は自筆ではなく、公証人に作成してもらう遺言です。
遺言者が公証役場において、2人以上の証人の立会いのもと、公証人に対して遺言の内容を口述し、公証人がその内容を筆記します。
公正証書遺言は、原本、正本、副本の3通が作成され、原本は公証役場で保管され(紛失や偽造等の心配がない)、正本と副本は遺言者に返されます。
(公正証書遺言の方式の特則)
遺言内容の筆記は公証人が行いますので、自筆証書遺言と異なり、遺言者が読み書きが不自由なケースでも作成できます。
また、遺言内容の伝え方は、口頭による説明が原則ですが、耳や口が不自由な方の場合は、筆談や通訳者(手話)等を通じて伝えることが可能です。
公正証書遺言の長所と短所
<長所>
■ 原本が公証役場に保管されるため、偽造、変造、隠匿、紛失等の危険がありません
■ 自筆証書遺言とは異なり、家庭裁判所での検認手続きが不要です
■ 遺言者が読み書きが不自由なケースでも、遺言の作成が可能です
<短所>
■ 公証人が関与するため、作成手続きに時間がかかります
■ 費用がかかります
■ 証人2人以上の立会いが必要です
■ 公証人、証人等を媒介する為、遺言の内容が完全に秘密とはなりません
公正証書遺言が向いている方
■ 遺言書の書き方がわからないという方
■ 遺言書が複雑になりそうだ。ちゃんと書けるか不安だ・・・という方
公正証書遺言作成に必要な資料
■ 遺言者本人の印鑑登録証明書(発行後3カ月以内のもの、実印も一緒に持参)
■ 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本
■ 財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票
■ 財産に不動産がある場合には、
①その登記事項証明書(登記簿謄本のこと)と、
②固定資産評価証明書または、
③固定資産税・都市計画税納税通知書の中の課税明細書
■ 証人2人の名前、住所、生年月日、職業が分かるメモ
■ 遺言内容の下書き
■ 遺言で、遺言執行者を決めておく場合には、その人の名前、住所、生年月日、職業が分かるメモ
公正証書遺言作成の流れ
公証人による公正証書遺言作成の流れは、下記のとおりです。
①公証役場と打ち合わせて遺言の内容を決める。
②遺言の内容が決まったら、実際に公証役場で公正証書遺言作成の日時を決める。
③公証人が、遺言者の本人確認を行う(印鑑証明書等による確認)
④証人2人に遺言作成日に立ち会ってもらえるようにお願いする。
※証人になれない人
○未成年者
○将来相続人となる予定の人(法定相続人と、遺言によって財産を受け取る人)
○将来相続人となる予定の人の配偶者・直系血族
○公証人の配偶者や四親等内の親族、公証役場の書記官や従業員
○丸遺言書の内容が理解できない人
なお、遺言者の側で証人になってもらえる適当な人が見つからない場合は、公証役場に依頼して、証人の手配をしてもらうことができます。(有料)
⑤遺言作成日当日は証人二人とともに公証役場へ。いよいよ遺言の作成です。
⑥公証人に遺言内容を伝え(口述)公証人が その内容を筆記する。
⑦公証人が遺言の内容を遺言者と証人に読み聞かせ、又は閲覧させて、筆記した内容が正確なことを確認させる。
⑧遺言者と証人が、筆記内容が正確であること承認したら、各自署名・押印する。
⑨公証人が、方式に従って作成された旨を付記して署名・押印する。
⑩原本は公証役場で保管され、遺言書の正本と副本を受け取る。
民法条文
(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
(公正証書遺言の方式の特則)
第九百六十九条の二 口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
2 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3 公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。